
【問いの実例】2代目と経営幹部の育成
問活を導入され、私が毎月訪問している沖縄県内の会社があります。
その会社の社長は数年以内に勇退することを決断しており、後継者の育成を急いでいるさなかでした。後継者とその2代目をサポートする次期経営幹部が、会社の経営を「自分ごと」と捉え、自分達らしい経営を考えてほしいというのが社長の思いでした。
私には同規模の会社を経営した経験もなく、「こういう経営をしたほうがいい」とアドバイスすることは出来ません。この会社の業界のことも詳しくありません。
それでも社長が問活の導入を決断したのは、「これからの会社を経営していくには当事者自身で考える必要がある」ということに気付いていたからです。考えるためには問いが有効ということで、私を毎月呼んでくださっています。
そこでは、
■自分達らしい経営とは何か?
■この会社が社会に与える影響は?
■社員全員で大切にしたい行動指針は?
などを話し合ってもらっています。
自分達は何のために働くのか
その会社は、おおざっぱに言えば店舗や宿泊施設など、多くの人が出入りする場所の清潔を保つお仕事をされていました。いわゆるクレンリネス業です。
体力勝負の側面があり、営業マンもブルーカラーのような雰囲気で働かれているのが印象的でした。その影響もあるのか、高校生の部活動のようなチームワークがあり、若い社員も元気いっぱいでした。
とはいえ、力仕事であり地味な仕事内容です。「なんでこんなことしているのだろう」と悩む若手社員がいてもおかしくありません。
そこで経営幹部で考えたのが「自分達は何のために働いているのか」。自分達の仕事は誰の役に立っているのか、を改めて問い直したのです。
色々話し合った結果、自分達は沖縄県のキレイを創っている、観光客を迎えたときに「沖縄ってキレイだね」って言ってもらえるような仕事をしていることに気づきました。
沖縄の基幹産業である観光業に貢献していることに改めて気づいたのです。そのときの参加者の顔はすごくハツラツとしていて、「こんなに意義深い仕事だったのか」と鳥肌が立っていた人もいました。繰り返しになりますが私はアドバイスなどしていません。問いかけただけです。参加者自身が問いかけに対し考えた結果、鳥肌が立つほどの仕事の意義に改めてたどり着いたのです。「そこを誇りに仕事をしていけば、社員全員のチームワークがより一層強化されることでしょうね」くらいは付け足しましたが。
それだけ質問は強力ということです。仕事の内容が変わったわけではないにも関わらず、明らかに仕事への取り組み方が変わったのです。
私も僭越ながら、間接的に沖縄のための仕事をしているという誇らしさを持って、今後もこの会社に訪問したいと思います。
[この記事を書いたのは、糸数直です]